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声優ミゼラブル14話・ナレーターメルマガ

2009年3月12日 ナレーターメルマガ107号より転載


この物語は、今では固めのドキュメンタリーや番組ナレーションのレギュラーをもち、はたまた声優として活躍することでひきこもりから社会復帰を果たした男、ヒッキーの人生を追った物語である。

なんだかんだで大手事務所「パッポンプラ」でジュニアをすっとばして「正所属」を勝ち取ることに成功。さらに歌って踊れるという誤解からキャスティングされたにもかかわらず、『事務所社長の誕生パーティ』の主演ミュージカル公演を成功させたのでした。

仕事面では、北三局(ぺい・さんきょく)社長、そして大番頭のマネージャー小堀田(こほった)さんにようやく存在を知ってもらえたことから、すこしづつですが、仕事の内容が大きくなっていったのでした。

ここからヒッキーは、本格的に社会復帰にむかって歩みだしたのだった!
運命とは、自らの預かり知らぬところで音をたてて回りだすものなり!
幸運・誤解・苦労・嫉妬、孤独。あらゆる出来事をまきちらしつつ、ヒッキーの声人生という名のジェットコースターは、レールを昇り出したのであった!

超人気作『サルサなら土禁(どきん)のとこで』に出演!

声優からナレーターに・ヒッキー声優の小さな端役から、やがて役付きの仕事が。それら作品の中にはやがてヒット作へと成長していくものもありました。

某有名少年誌の連載「老人禅師」のアニメには、恩師である飛葉さんと競演を果たす。
さらにゲーム『妊婦・オブ・ランバダーズ』はアーケードの話題をさらい、次々と続編が作られるヒット作に。
そして極めつけは…一部熱狂ファンに支えられる、長寿シリーズ『サルサなら土禁(どきん)のとこで』への出演!売れっ子声優がこれでもかこれでもかと出てくる超人気作だったのでした。

ヒッキーが普通の声優志望者なら、それは幸せに包まれた日々のはずだった…

しかし!

ひきこもりだからーーっ!

ヒッキーの心でうごめく「例」の虫…。

ありがたい!すっごくありがたくって涙が出ます!
でも…元々ひきこもりだからーーっ!!
どうしても、アニメの現場ではキョドっちゃうーーッ!!

いきなり放り込まれたアニメの現場。
必死になってジュニアからあがってくる新人たちを見て、ヒッキーにはある種の『ひけめ』があったのです。現場にいけば、一癖も二癖もあるベテランやアイドル声優陣に包囲されることの息苦しさ。アニメ好きなキャストやスタッフとの会話に居心地の悪さを感じていたのでした。

「自分は基礎を叩き込んで来なかったんじゃないだろうか」
一足飛びに正所属になった事が、かえって焦りを生んでいたかもしれないと考えはじめた頃。

プレッシャーにへこたれそうになるヒッキーを受け止めてくれたのは、他でもない、出会いから”おつきあい”にまで進展していた、下田くぬぎタンでした。

じゃナレーターやってみるにょ

「く、くぬぎタン、ヒッキーやっぱりアニメの現場は苦手だよ(ノ_<。)。向いてないのかな~」
『ヒッキー、声の仕事は好きなんでしょ?』と優しく答えるくぬぎタン。
「もっもちろんだよ、仕事は好き!でもやっぱり苦手…」
『そんな覚悟じゃとても声優として長く生き残っていけないにょ』
「でもなんかいまの自分のスタンスになんか息苦しさが…」

くぬぎタンの言葉を聞きながらも、ヒッキーの脳裏に次々と浮かぶのは「消えていった先輩」たちの顔、顔、顔…。

『うーん。じゃナレーターやってみるにょ。同じ声の仕事だけど、一人っきりの仕事だから。といってもナレーターは声優とは同じ声を使う仕事だけど、違う業種という面もあるし、なんの準備もしてませんじゃチャンスも活かせないよね。とりあえず勉強はじめてみたらいいにょ』
「え~べ、べんきょう…?(-_-;)う~ん、今さらね…一応声のプロだし…別にいらないんじゃぁないの?たぶんできると思うし…」
『くぬぎ、それは違うと思う!』
くぬぎタンが初めて語気を荒げて言うのでした。

「うわ~ん、ごめんなさい。で、でも、今から学んだんじゃもう遅くないかな…」
『だいじょうぶ、ナレーター界は『声が板につく』のが30代からといわれているにょ。実際にいま売れている人たちが売れられたのは30代中盤が多いはず』
「くぬぎタン…(じーん)」

ストレートナレーションって何?

そして後日。
人づてに聞いたナレーションのトレーニングジム「マギー'Sブートキャンプ」の門を叩いたのでした。そこには厳しいコーチとして名高いナレーションの鬼軍曹「マギー洋介山(ようすけざん)」先生がいた。

声優とは勝手が違うので、最初の一ヶ月くらいは困惑の日々。

あれ~?台詞と同じ気持ちを込めれば伝わるんじゃないの?
ストレートナレーションって何?
”捨てて読む”って、なに?
論理的なシャベリって、なに??

あまりに勝手が違い毎日がヘコむ一方。
「同じ声の仕事なんだから、声優の勉強してれば自動的にナレーションできるって言ったの誰だよ~!やること全然違うじゃないか~(ノ_<。)」

隊長にしごかれながら、せっせと通い、声優とナレーションとの感覚の違いを探り探り学んでいた。そんな日々の中、おぼろげながらコツをつかんだと思える瞬間があった。
「聞き手が受けとる時には、会話のどこにどう音程がついているか」
それは”ナレーション”を構築していく方法。古典のアナウンス理論に実践の要素を付け加えたものであった。

マギー『ヒッキー。とてもいいね(^o^)』
鬼軍曹マギー先生からのほめ言葉。それは人生で初めてほめられたくらいにうれしかった。自分にはナレーションが向いてるんだと思うことができた。

(それになんといっても一人で出来るし!)
(ぼくはナレーションを仕事にしていこう!)
ヒッキーにとって魔法のように世界が変わった瞬間でもあった。

準備だけはできてる!

そんなある日。
マネージャー小堀田さんから一本の電話が…

『ヒッキーいまどこにいる?1時間で局にこれるかな。Aさんが風邪で声出なくなって…代打でお願い!出来るだけ急いで!』
「はいっ!30-40分で行けると思います!(ナレーションの仕事はやったことないんだけど…けど準備だけはできてる!)」

それがナレーターへの道の第一歩だった。その仕事から少しずつナレーションの仕事がつながって行った。そして今では仕事の多くがナレーションになって、生活も安定するようになった。

彼女に伝えたいことがあった

それは、花満開の、ある春のこと。
どうしても彼女に伝えたいことがあった。

『くぬぎタン。まずありがとうと云いたい。君が、ぼくの心とナレーターへの扉をあけてくれたんだ。あの言葉がなければ、ぼくは今でも部屋の中にひきこもっていたかも知れない。それから…ぼくと、結婚してくれますか?』

緊張しながらも<音程>を意識して精一杯、伝えようとした。

でも、うなずいた彼女を抱きしめるときには、ナレーションの術は必要なかった(完)

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ヒッキー

声優とナレーターを両立・ヒッキー引きこもりから抜け出し、声優からナレーターになった男。
現在ではドキュメンタリーや番組のレギュラーナレーション、声優としては大ヒット作に出演するなどみごと社会復帰を果たした。

ガンバルジャン

声優ジュニアからナレーターに・ガンバルジャン夢にまで見た声優ジュニアは、まるで「レ・ミゼラブル(ああ無情)」な世界だった…。ナレーションを学ぶことで番組レギュラーをもち、社会復帰に至った、男泣きナレーター。