HOME > ナレーターたちの物語 > 声優ミゼラブル > 第10幕・ヒッキーの「ヒッキーサンバでポン・後編」

声優,ナレーター,松田佑貴,養成所,ナレーター,

声優ミゼラブル10話・ナレーターメルマガ

2009年1月22日 ナレーターメルマガ103号より転載

声優として認められるヒッキー
なんだかんだで大手事務所パッポンプラの「正所属」をかちとったはいいが、なかなか順調に仕事ははかどらない。そんなヒッキーに「歌って踊れる」という誤解のもとにステージの主役が舞い込む!
主役に迎えられた舞台「ヒッキー・サンバ」!

ヒッキーは、バックダンサーの同期のジュニアたちと共に、初めて舞い踊ったのであった。

ついにやってきた、大本番!

声優として認められるヒッキー本番直前での舞台袖。いつもはじーと怒った目で見ている『ガンバルジャン』が、今日はなぜか涙目になって辛そうでした。
ちょっと恐かったけどおもいきって声をかけました。その後の練習でも何度か足をふんづけたかもしれなかったからです。

ヒッキー「(足の)痛みは大丈夫?もしかしてお腹が痛いとか?」
ガンバル「この程度の痛み、耐えられなくて、声優にはなれんですから」
ヒッキー「あまり無理しないで…」

ガンバルジャンが動けるかどうかかなり心配でした。でも、もしものときは僕がフォローすればいいんだ。なにがなんでも舞台を成し遂げる。そんな思いでいっぱいでした。

そしてどっ緊張の中ついにやってきた、大本番!

空気に呑まれないように、見た目だけは平静をたもちつつ、どっきどきの中、飛び出すようにステージへ。音楽がなりだし、踊りだすヒッキー。
ちらりと後ろを振り返ると、バックダンサーの『ガンバルジャン』も、きちんとリズムを刻んで踊っています。

いくぜパッポン 響けチェンマイ 踊れ東南アジアのカルナバル
誰も彼も浮かれ騒ぎ 飛ばすリップがノイズになる
俺、俺がヒッキーサンバ 俺、俺のヒッキーサンバ
ああゲットだぜ えびでタイを釣る
奢ろうアニータ ブレスさえ忘れて 喋りまくろう
サンバ ビバ サンバ ヒ・ッ・キー・サ・ン・バ~ 俺っ!

『ヒッキー・サンバ』、それはそれはの、大・成・功~!!

あふれる歓声。鳴り止まない拍手。
力づよくうなずく、飛場ミゲ~ル師匠!
お互いに耳打ちしあう北三局(ぺい・さんきょく)社長とマネージャー小豆地(こまめち)さん。大番頭・小堀田(こほった)さんも笑顔です。

ほ~っ…よかった!
仕事の合間をぬって、一人で黙々と(性にあってるんですけどね)公園で練習していた陰の努力が報われました。

ステージ終了後、楽屋の前で大番頭・小堀田さん直々に声をかけられる。
小堀田「なかなかいい出来だったよ。さあみんな待ってるから、こっちへいらっしゃい」
背中を押されながら、盛大なパーティが開かれる会場へ。

会場はTV局のプロデューサーや音響監督、そして各事務所の社長であふれかえっていました。マネージャー小豆地さんに引っぱられながら挨拶回りをしていく。でもやっぱり初対面の相手とは何も話せず立ちすくむヒッキーだった。

帰り道いっしょだから車で送っていくよ!

そんな中、もう一つの大手事務所『熱海見本』の社長と一緒に来ていた女性声優「下田くぬぎ」がいた。彼女は飛場師匠のところの劇団員でもあり、いくつかのアニメ作品でも何度か共演した顔見知りだった。
「あ、きょうは…もごもご…ヒヒヒ、ヒッキーで~す…」
やはり人が多い中では、顔見知りでもほとんど話せない…
もう帰ろう…。

一通りの挨拶まわりを終えたヒッキーは(4人以上いる場所は苦手なので)肩を落としつつ、会場を後にしようとしていたところ。一本の携帯メールが。

『今日σぁωた、かっこょかったょ!さっきはこ〃めωね、ぁたぃ、人が多いとツ冫ツ冫Uちゃぅσら~!こωと〃せ〃ひぁいまUょぅ★勹ヌ≠〃ょり★』

?なんだ、これ?
意味不明な暗号メールが送られてきたのでした。ま、まさか嫌がらせ…?いやちょっとまてよ。ギャル語だ~!

(今日のあんた、かっこよかったよ!さっきはごめんね、あたい人が多いとツンツンしちゃうのら~!こんどぜひあいましょう。クヌギより)

早速返信。
「帰り道いっしょだから車で送っていくよ!」
『☆うれぴー☆』
そのころヒッキーは、かなり頑張ってローンで買った中古車に乗っていたのです。

もきゅもきゅしながら車を走らせていると、前方に、一団となって歩いている集団が…

あ、同期の皆だ!

血と汗と涙で作り上げた舞台が成功をおさめた。それは全員の力があったからだった。だからこそ、心から今日の感動を皆と分かち合いたかった。

車を停めて急いで言葉を探した。
「踊り、良かったよ…」
胸からこみ上げてくる温かいなにかが、次の言葉をさえぎった。それ以上の言葉はいらないと思った。その思いは皆も共有しているはずだから…

そして感動に浸りつつ、ウィンドウをあげ、アクセルをゆっくり踏みだした。
ゆっくりとバックミラーに遠ざかっていく、ジュニアの皆さんがこちらをみているので、ふぁんっと、クラクションを鳴らした。

くぬぎちゃんとの車中、舞台がはねた高揚感と、温かいなにかに包まれ、なぜか饒舌になっていた。その夜が二人の距離を縮めて、結婚にいたるとは、その時は思ってもなかったヒッキーであった。

そして彼女が、ナレーターとしての扉を開けてくれるとは思ってもいなかった。

ナレーターを応援したいナレーターを応援したい







ナレーターたちの物語ナレーターたちの物語

ナレーター,ナレーション,知識,情報,ナレーター,ナレーション,知識,情報,

ナレーター,ナレーション,マネージャー,専門,事務所,ナレーター,ナレーション,マネージャー,専門,事務所,

ナレーターメルマガを読むナレーターメルマガを読む

ヒッキー

声優とナレーターを両立・ヒッキー引きこもりから抜け出し、声優からナレーターになった男。
現在ではドキュメンタリーや番組のレギュラーナレーション、声優としては大ヒット作に出演するなどみごと社会復帰を果たした。

ガンバルジャン

声優ジュニアからナレーターに・ガンバルジャン夢にまで見た声優ジュニアは、まるで「レ・ミゼラブル(ああ無情)」な世界だった…。ナレーションを学ぶことで番組レギュラーをもち、社会復帰に至った、男泣きナレーター。