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2013年6月27日ナレーターメルマガ225号より転載

こちらはvelvetの掲示板:『ナレーションの虎』に来た質問です。

【タイトル】プロのナレーターをまねすることは
【投稿者】 ぷーさん
【内容】
はじめまして。いつも見て勉強させてもらっています。そこで一つ疑問がわきましたので回答をいただけたらと思います。それは、この掲示板での回答の多くに、TVのナレーションをシャドーイング、マネをしてみなさいとあります。ナレーション業界に限らずコピーはあくまでもコピーで本物にはなれないと思っています。
いつかは今の第一線のナレーターの人も追い抜かないとだめな世界と思っています。その人をマネしていてもいつまでたっても追い抜けないし追いつけないのではないのかと。コピーは本物には勝てない、劣化版だと。
なぜそんなにマネを勧めるのでしょうか?マネをすることで変な読み癖とかもついてしまうような気がするのですが・・・。
生意気な質問で不快にさせたらすいません。でも答えてもらえるとうれしいです。よろしくお願いします。

養成所で学んだ人がコピーに疑問を持つことがときおり見受けられます。
そこで今回はコピーについて考えていきたいと思います。

練習方法としてのコピー

まず『コピーで本物にはなれない』これはオリジナリティを尊重し作品を創りだす、クリエイティブな分野では耳にする言葉です。確かにクリエイティブな創造物としての芸術作品では、模倣は一流でないどころか恥じるべきことです。

質問者は、コピーでスキルを習得する練習方法と、芸術作品としての模倣を混同しているのではないでしょうか。

それに、プレーヤーとして一定以上のコピースキルを持った表現は、プロ基準にあるといえます。楽譜を徹底してコピーするスキルを持つピアニストは、一流であるとはいえなくても、プロの水準にあると言えます。それはナレーションにおいても同様なのです。もちろん、ただコピーするだけでは第一線のプレーヤーを超えることは出来ません。一流になるのは、基礎の段階をきちんと踏まえてから、次のステップが必要なのです。

表現の上達ステップ

能表現を学ぶステップとは【守破離】という言葉の中にあります。
【守】型を徹底的に習得する
【破】他の型や自分の個性を取り入れる
【離】型から離れ独自の表現に至る
コピーとは【守】の段階を示しています。【破】の段階では第一線に近づけるかもしれません。【離】の段階になって一流を超える独自の表現になっていきます。
【表現の基礎はコピーにあり】
プロのナレーターのコピーから学べることは、リズムやスピード、強調点や巻きや張り、ブレスの位置。それぞれがそのプレーヤーの生理なのです。その生理は実は個性であるだけでなく読みの必然だったりすることを実感していくのです。その段階になると、ぐっとプロのナレーターに近づくことが出来ます。

表現分野の練習方法として、コピーを取り入れていないジャンルはほとんどありません。完成品ではなく練習方法としてです。古今東西、プレーヤーたちは初期から徹底した模倣によってそのスキルを習得する過程を踏んでいます。 絵画におけるデッサンや模写、音楽では楽譜どおりに弾く訓練。古典である能や歌舞伎、書道、茶道、種々の武道でも同じ教育法です。

唯一の例外、演劇声優教育

ただ唯一。例外としてそれが行われていないジャンルがあります。近・現代演劇およびそれを基礎とした声優教育です。初期から、型にはまらないように、個々のオリジナルな表現が教育で優先されています。コピーは「まね」として厳しく注意されることがあるほどです。新しい人物像を創造するという高い志のあらわれなのかもしれません。また古典演劇(型を重視する)への対抗意識。新劇やメソード演技での内面心理から演じる手法。舞台を個人技でなくアンサンブルでの芸術作品として捉えていることなどが、理由として考えられます。

演劇・声優・ナレーション教育の現場で

私は長い間、劇団や演劇、そして声優養成所でその教育を見続けて来ました。当初はなにも疑うこと無く、役者たちが成長していくことが楽しみでした。

ただ残念なことに、その効率はとても低いものでした。演出家や講師の熱心な指導を受けたとしても、2-3年経って1割程度しか役者としてプロの水準になっていかないのです。これは個人的な視点だけではなく、様々な演劇・声優教育を受けた人々からの証言もあります。5年10年やろうとも下手な人は下手なまま据え置かれ、いわゆる「型なし」の状態で過ごすことが多いのです。付け加えると、プロとして成り立っているプレーヤーの多くは影でコピーの工夫をしている人でした。

もちろん素養や環境、相性などもあるかもしれません。演技とはそれだけ難しいからかも知れません。ある時点から、習得が困難という理由だけではなく、教育手法にも課題があるのではないかと思いあたったのでした。

そこでスクールバーズでコピーを推奨して実践したところ。初心者でも1年程度ではっきりとした効果があらわれてきました。もちろんプレーヤー全てという訳ではありませんが、効果効率ともに確実に上がっていることは実感できています。取りあえずの「型」は入っていきます。そうなってはじめて各人の次の課題、「型」に「魂」を入れていくことに取り組めるのです。

クセについて

「変な読み癖」というのは手本がないまま自己流で練習した結果、”無自覚”に出てくるものです。コピーとは真逆の行為といえます。コピーする過程とは、その人のクセを見つけ出し、自覚的にそれをまねることです。この繰返しで、プレーヤーのクセを自らの表現として獲得していく。その積み重ねが表現者の多彩な引き出しになっていくのです。

プレーヤーとクリエイター

最後に一つの注意点があります。プレーヤーはコピーすることで表現を獲得していきます。一方、自らの中にあるモノを吐き出すことによって成立するクリエイタータイプの表現者がいます。クリエイターは自己にないモノのコピーを拒絶しがちです。またコピーすることが不器用であったりします。クリエイターのタイプは自ら発信することによって自分の価値を表現します。

ナレーションでは第一線の生きた教科書がテレビで放送されています。それをコピーすること。なぜなら古びた表現ではなく、いま生きている表現だからこそなのです。
コピーによる練習方法が有効であることが伝わったでしょうか。みなさんが、素晴らしいプレーヤーになることを祈っています。

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