HOME > ナレーション知識 > ナレーターメルマガ読み切り集 > vol.11・『淡々と読んで』のディレクション考察

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2015年11月19日ナレーターメルマガ292号より転載

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┃質┃ 最近のナレーション
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┃問┃投稿者: エルサ
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■最近のテレビのCMのナレーションを聞いていると抑揚がなく淡々とした読み方が多い気がします。今は自然に読める方が求められていると聞きましたが、やっぱり世界観を考えすぎず自然に読んで、読んだものがCMに合うのか合わないのかという考え方でよいのでしょうか。みんな同じに聞こえてつまらないんです。

さあ、虎からの回答は?!
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┃ Re: 淡々としたナレーション┃
┃■投稿:大窓王       ┃
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エルサさんナレーションの虎へようこそ。
確かに淡々としたナレーションはCMを中心にドキュメンタリー番組にも多いですね。ナレーション録りの現場でも「淡々」または「坦々」と読んで欲しいとディレクションされることが多いことも事実です。


まず「淡々」もしくは「坦々」とはどういう表現でしょう。
◎「淡々」メリハリや抑揚のないさま
◎「坦々」平坦で起伏がない
ともに抽象的な意味としては同じく「抑制した読み」を指しているといえます。求められていることは、オーバーに感情を入れない表現ということでしょう。
ではなぜ【淡々・坦々】とした読みが求められているのかその原因を探ってみたいと思います。

景気の要因で『共感』CMが増えたこと

昨今は回復してきたとはいえ、長い間日本は不景気の中にありました。経済の停滞で、画期的な新商品やサービスを声高に謳いあげるCMの影は薄くなっていきました。テレビCMの主役である大企業は、革新性を問い勝負していく体力がなくなってきたことが背景にあります。そこで出てきたのは、消費者に寄り添うかたちでの宣伝形式です。それは優しく繊細な小さな幸せを『共感』していくものです。そのようなCMを多く見かけているはずです。

『共感』のCMではナレーションも決して感情の押し付けはしません。感情の抑揚を抑え、繊細な表現が求められます。そうした丁寧で優しい表現は『共感』と共に人の胸を打ちます。しかし繊細すぎることは小さな表現になりがちです。表現が小さくなることによって、結果的に単なる棒読みにしか聞こえなくなる落とし穴があります。『共感』CMの場合は出すぎることより棒読みのほうがましだと言えるのかもしれません。

番組とナレーションの関係

CMだけでなく番組、特にドキュメンタリーでは【淡々・坦々】のナレーションが求められることは少なくありません。

ナレーションは映像との関係性の中で表現されます。強く映像で伝えるところではナレーションは引き、映像だけでは伝えきれないところでは出る。その差引きが作品に説得力をもたせます。

ドキュメンタリーでは、出すぎた表現が、作品に別の解釈を入れることを嫌い、結果的に【淡々・坦々】とした表現になりがちです。残念ですが日本のドキュメンタリーでは映像とナレーション両方が「淡々・坦々」としてしまい説得力が弱く退屈な作品が多く見受けられます。メリハリをつけて作品に説得力をもたせることが理想のナレーションだと私は考えています。

日本の美意識の源流

【淡々・坦々】とした表現は日本の美意識の源流にあるのかもしれません。禅から連なる茶道でも抑制した中での美が追求されます。虚飾のないシンプルな表現から、深い精神性を感じてしまうのです。かのスティーブ・ジョブズも信奉した、余計なものを削ぎ落としたミニマルな有り様。厳しい抑制から、かもし出るものを尊ぶ文化なのです。それが日本人の感性の根元に組み込まれ、私たちの胸を打つのです。

日本人は芸事に限らずスポーツでもなんでも『道』にしてしまいます。声優道であったり野球道であったりです。本来なら芸能もスポーツも、遊ぶということに近いので、楽しく学ぶでよかったかもしれません。であるにもかかわらず、厳しい修行とともにあってこそ成り立つとしています。まるで禅僧のようですね。それが日本の美意識の源流にあるのです。だからこそ、その是非自体も簡単には答えられるものではありません。

【自然(ナチュラル)】に読む

【淡々・坦々】と同様に【自然(ナチュラル)】に読むことは表現のもう一つの核といっていいでしょう。【自然(ナチュラル)】は「作為的な表現」を排したことに近いと言えます。また【ナチュラル】は【リアル】の隣にはあるがそれだけでもありません。これらもとても深い内容なのでここでの考察は省きます。

>世界観を考えすぎず自然に読んで、読んだものがCMにあうのか合わないのかという考え方でよいのでしょうか。
これに対する答えは「考えるのではなく、感じたまま読むこと」。考えることは練習の時だけにすべきです。そこで感じたことが、その時点のあなたの等身大の【自然(ナチュラル)】な自分の表現です。作品に無理に合わせようとすれば「作為」が見えてきます。それは【自然(ナチュラル)】ではないと看破されてしまうかもしれません。

【淡々・坦々】や【自然(ナチュラル)】であることに美意識や哲学があれば、そのようにかもし出てくるかもしれません。それとも、「作為」に捉えられないように絶妙に表現することがプロフェッショナルかもしれません。

答えは簡単には出ません。ナレーションの虎たちも表現の密林で、さまよっていることだけは言えます。(終)

いかがだったでしょうか「ナレーションQ&A」。
これを読むプロナレーター、マネージャーのみなさんも、ぜひ皆さんなりの意見を書いてみてください。業界のパワーにつながっていくと思います。
http://goo.gl/oF5HvI
また「営業アピールについて」「キャスティングに向けて何をすべきか」「読みを進化させたい」など、”プロ”に近づくための質問も受け付けています。ぜひ書き込みしてください。
ただしあなたが話す相手は最前線で戦うシビアな「虎」であることは忘れずに…^^;

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