2006年12月14日 ナレーターメルマガ35号より転載

プロデューサー『う~ん、何か臭うな』

大窓王の発した一言に、私は耳を疑った。臭うって一体何が??大手衛星制作からプロデューサーの熱意を聞いて感動しながら帰ってきた私にとっては大窓王の言葉は疑問だった。
【プレーヤーやスタッフの待遇を向上させていくことが、プロデューサーの務めだと思っています】担当プロデューサーの熱い言葉を思い返すと、大窓王の一言が無性に腹立たしかった。

「大窓王。何か臭うって、どういう事ですか?」
『それよりも、その担当者、見た目は、年齢は、話し方は?』
大窓王の矢継ぎ早の質問が続いた。

けど私は大窓王の言葉を遮るように、言葉を強めた。
「いいですか大窓王、さっきも話した通り担当者はいい人です!そんなに心配すること無い思います」大窓王はピシャリと机を叩いて、鋭い眼光でこちらを見つめた。
『いいか、おかしな話の流れなのに、きれいごとでごまかそうとしている気がするんだ。こいつはとんだ”狐”で偽善者のにおいがするな・・・でギャラはどうなった?』
私は大窓王が些細なことにこだわって、神経質になりすぎじゃないかと首をかしげた。

「なんだかここ数年、制作費も上がってないそうですし、担当者はギリギリの中でプレーヤーやスタッフに少しでも払えるお金を作り出そうと頑張ってると思います。でもやはり最低保証金額でしか払えないみたいです。千円上がるかどうかも分からないと。ただ多く払える月は、多く払うと言うし、いままでどおり協力しようと思います」
大窓王は眉間にしわを寄せて考え込んでいた。私はそんな大窓王に気付かないふりをした。


『ますますおかしい、大手衛星制作ほどの会社が千円上げるのも難しいとは考えられない。まあいい、それより担当者の印象はどう感じた?』
「ええ、さっきも話しましたけど、プレーヤーの事も、スタッフのことも良く考えて貰ってると思いますよ。きっとプレーヤーに聞いてみても同じ意見だと思いますよ」
大窓王の鋭い視線が、一瞬さらに鋭さを増した。
『プレーヤーには、まだ確認していないんだな?』
「ええ、でもきっと同じ意見だと思いますよ」
大窓王は軽くため息を付くと、携帯で電話をし始めた。そしてコンピュータで資料を打ち出していた。この時、大窓王が何を考えているのかまったく考えようともしなかった。

『小窓王、この担当者はやはり狐だったよ。いいかこれをよく見てみろ。担当者が話していた矛盾点がよくわかるはずだ』
大窓王はそう言うとプリントアウトした。ここ何ヶ月かのギャラの明細と、スケジュール表が印刷されていた。

こんなんで何が分かるんだと言う私の思いを感じてか、大窓王がやさしい口調で指摘した。
『よくスケジュールと、ギャラを見比べて』
「あ、毎月ギャラが変動で支払われてるけど、取り直しや、別日での再収録が多い月の方がギャラが高くて、取り直しがほとんどない月の方がギャラが安いって・・・」
『こんなに取り直しが頻発していて、それに収録が朝迄掛かってると言うのに、スタジオ代を浮かせて、ギャラを多く払うと言う事自体が嘘くさい話だろ。そしてギャラとスケジュールもまったく整合性が合って無いだろう』
「え、でも担当者は・・・」
『いいか、毎月のレギュラーのギャラが固定されていないと言う時点でおかしいと気付かなきゃ。これは自分たちの失敗を、プレーヤーから搾取する事で帳消しにしている仕組みなんじゃないかと思う。相手の話だけを聞くとプレーヤー、スタッフのことを考えてやっているかのように思うけど、実はプロデューサーが相手を丸め込むための詭弁だと言う事がよくわかっただろ』
確かに冷静に考えてみれば、その通りだ。

何も言葉を返せない私を尻目に、大窓王は更に続けた。
『それにこの狐の罠をあばく上でもうひとつ重要な事がある。さっきプレーヤーと話したが、小窓王が話していた、担当者の印象と実際現場で接しているプレーヤーの印象はまったく逆の意見だ』
「え??あ・・・」
『彼が親身にスタッフやプレーヤーのことを考えているなんて、ありえ無いそうだ。現場では、横柄な態度であまりにも扱いが酷く、泣いて辞める派遣スタッフが続出しているようだ。プレーヤーへの対応も許せないくらい傲慢だと。そしてギャラの支払が変則的だなんて説明は聞いたこともないそうだ』
大窓王の説明を最後まで聞くまでもなく、ただ自分の不明を恥じるしかなかった。

『いいか相手は小窓王の反応を見ながら、色々な揺さぶりをかけていたんだ。君がこの件でプレーヤーと深く話していない事を話の途中で察知し、ギャラのいいかげんな説明をしてきたんだと私は見極めている。声色を変えてなだめたり、すかしたり、時には威圧的な態度を見せるとは、なかなかの狐だよ』


あれだけの情報で狐の罠を見破るとは・・・あいかわらずの大窓王の鋭さに尊敬の念が深まった。それに引き換え、自分はなんだったんだ。作り話に感動していたなんて!
私は悔しさから、思わず声を絞り出していた。
「くっそ、あの偽善者の狐め!絶対に許さない!」
『まあ改編で新番が決まって油断していたのも有るが、相手も海千山千の古狐だ。小窓王が化かされたのも無理はないよ。そしてこういう狐と出会うのもマネージャーとして大切な経験だ。さーて、この後をどうするかだな』

そう言って、大窓王がニヤリと不適な笑みを浮かべた。
私は全身の毛が逆立つのを感じながら、強く拳を握りしめた『狼が狐に騙されたまま引き下がれません。もちろんプライドをかけ全力で闘います!』

次号、『狐狩り』狐への反撃の方法とは?一体どうなってしまうのか!!

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