HOME > マネージャーの視点 > 極細木スガ子の「きっぱり言うわよ!」 > 13話・事務所の深い落とし穴編(弐)「プレーヤーの深き欲望」

ナレーター専門,マネージャー,

2009年7月16日 ナレーターメルマガ116号より転載

ラッキー,宝くじ私は極細木が美酒に酩酊し、とうとう私の夢をきいてくれる事になったことに喜びいさみ、プレーヤーの本音をさらけ出してみた。
「どこかで誰かが、ボクの才能を見いだしてくれるはずなんです」
「山ちゃんの”甘い夢”の足下に、落とし穴があいてるワ!…それも深いやつ」

宝くじに人生を賭けるのはかなり危険なこと

そして極細木は少し高ぶりながら語り出す。
「ドラマが出来上がっちゃてるわね~。でも人生はハッピーエンドばかりじゃないのヨ。早く夢から覚めて!山ちゃんは言ったわね?【だからとにかく、事務所に入らなきゃ】【どこかで誰かが、ボクの才能を見いだしてくれるはず。そんなチャンスがやってくると信じて】【自分を”育てるためのプロデュース”をしてくれるんじゃないか】と新人はみんな、無自覚にこう思い込む人が多いんだけど。言ってることは全部共通してるワ。なにかにぶら下がろうとしたいだけなのよネ」
「あ…そうなのかも、しれません…」

「ぶら下がったまま売れるラッキーな人もたまにいるから”絶対にない”とは言わないわ。でもそれは宝クジが当たるようなものなのよ。夢を打ち砕いてしまうかもしれないけど、現実は厳しいのよ。そして宝くじに人生を賭けるのはかなり危険なこと」
「それは自分なりにこの世界の厳しさは、覚悟しているつもりだったんですが…」

「〈きっぱり〉言うけど、そこが怖いのヨ。ビジョンもなく手ぶらでいける所にそうそう幸運はころがってないワ。ワンチャンス。それすらないかもしれない…」
「は、はい…」

目的は売れることであって、事務所所属ではないのよ

「ナレーターとして生き残ってきた人に共通しているのは、ぶら下がろうとする人は少ないってこと。目的は売れることであって、事務所所属ではないのよ。事務所は沢山の手段のなかの一つでしかないワ。事務所に入るなってことではなくて、うまい活用をしなければいけないってことよ。ワタクシの経験では、案外フリーで努力した経験がある人は長く続く確率は高いワ。自分で売る努力をした人のほうが逞しいってことよネ。そしてつなげていく力も強いの」
「で、でも…事務所に入ると営業してはいけないと聞いたのですが…」

「全てがそうとは言い切れないけど、そういう所は多いわね。そういうところはプレーヤーの人生の責任はどうするつもりかしら。そういった所でも、売れている人ほどそれなりの工夫はしてるわよ」
「ぼくは営業とかそういったものが苦手っていうか、経験がないので想像がつかないです」

「プレイヤーで営業を不得手とする人はいたっていいわ。不得意なまま売れている人もいるし。でも売ることの意識があるかないかで大きな差がつくワ。仕事をつなげていけるかどうかにも大きな関係があるの。少なくともワタクシはそう考える」
「そういったことや仕事も含めて少しづつ経験を積んでいきたいと…」

「皆そう言うワ…少しづつは実はものすごく難しくもあるのよ。思いっきりやったつもりでも歩みは少しずつなものだから。少しずつのつもりなら立ち止まってるか後退していると思ってて」
「あぅ……」

「ワタクシはマネージャーとして、星の数ほど消えた人を見てきたのよ。誰の注目も浴びず、誰からも知られることもなく、燃え尽きることもできずに、明日を信じて志なかばに、消えていったかつての新人たちが脳裏から離れない…」

女帝、極細木!
吐くその言葉一つ一つに、まるで血がまとわりついているかのようであった!
私は思いを巡らす。その血とは、極細木のものか、それとも彼女がみた”消えた新人たち”のものであろうか…

「ナレーター」を語るとき、そこに「人生」は果たしてあったであろうか?

極細木のマネージメントの根幹は『ナレーターの世界を、どう生き残るか』これに尽きる。一見、「売れることだけ」を見据えているかのような彼女の無慈悲な”きっぱり”は、その背後にたくさんの新人への追悼の想いがそうさせているのかもしれぬ。無念の魂を前に、体裁は無用だ。生き残るには、もっと長い目で己を見つめなければならない。見つめきった時、はじめて描ける”ビジョン”があるのだ。

私を酔わせ饒舌にさせてしまった杯の中の美酒をみる。
私が「ナレーター」を語るとき、そこに極細木が考える「人生」は果たしてあったであろうか?

「先生…僕は、新人でありながら、いや、右も左もわからない新人だからこそ、ナレーターとしての袋小路にいるようです。『そこにさえいけば、素晴らしい世界がある』と信じて、ただただ事務所所属を目指してきたのに…いったい、どうすれば胸を張ってナレーターだと言えるのですか?」
酔いが残っているのか、私がつい感傷的に言うと極細木はあらぬ方をむいて、煙草の煙を吐き出しながら言うのであった。

「そうね…落とし穴にはまらないための、”だめんず”ポイントくらいは教えておこうかしら…」
”だめんず”という言葉が頭の中でこだまする。ナレーター人生における”だめんず”とは何なのか。
私は極細木のために極上の酒をオーダーしていた。

次回極細木「事務所の深い落とし穴編(其の参)”だめんずの世界”」 乞うご期待!

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