HOME > マネージャーの視点 > 極細木スガ子の「きっぱり言うわよ!」 > 12話・事務所の深い落とし穴編(壱)「甘美な酒」

ナレーター専門,マネージャー,

2006年11月30日 ナレーターメルマガ33号より転載

養成所私と「声業界の女帝」との夜は営々と続いていく…前回、極細木は語った。どこの事務所にもあるマネージャーたちの姿。
「”優しさの毒”が全身にまわり、マネージャーは堕ちていくことでしか生きていけなくなるのかもしれない…」と。

どこかで誰かが、ボクの才能を見いだしてくれると信じて頑張っているところです

今夜の極細木は、甘美な酒に誘われているのか。顔がほのかに赤みを帯びている。
声業界の本当の深淵を覗くことができる、絶好のチャンス。それは私にとっても気分が高揚する夜だった。

「堕ちたマネージャー…私たち新人には、考えもつかないことでした」
「そうよね…新人は誰だってはじめはがむしゃらに情熱だけで動くものよ。でも、きちんと行き先の足下をみていないと…深い落とし穴があることも、あるわ」
「落とし穴…??」

「ところで山ちゃんはまだ、勉強中の新人よね。どんなナレーターになりたいの?」
「そうですね…日本中に感動を伝えてみたいです。僕の声と読みで、感情や、情景をたくさんの人に届けたいです。それと…誰かが何かで僕の声を聴いたときに『あ、あの声の人だよ』と言われたいです!」

「うんうん。わかるわよ。そんな風になると素晴らしい気分だわね。その夢の実現のために、どうするつもり?」
「まずは仕事をするために、とにかく事務所に入らなきゃと思ってます」

「どうやって?」
「事務所付属の養成所か、レッスンの最後に事務所各社がオーディションを用意してくれている学校に入りますね。そこを勝ち抜いて事務所所属につなげていければいいな、と」

「それはうまくいきそう?」
「ボク、技術はまだ勉強途中なんです。勉強は一生しなければならないという覚悟はできているつもりです。だからきっと、どこかで…どこかで誰かが、ボクの才能を見いだしてくれる。そんなチャンスがやってくると信じて頑張っているところです。まわりからよく”いい声をしてるね”と言われますし。ボクの良いところの声や感性やこの情熱を生かしてくれる人とか…!」

「ふふ、山ちゃんは自信があって頼もしいワ。で、仕事はどうやってとるの?」
極細木の褒め言葉に、甘美な酒の酔いが全身を駆け抜ける。言葉は勢いを増して止まらなかった。
「先生に褒められると照れますね(苦笑)それは…事務所に所属さえしてしまえば、事務所が手配してくれると思いますよ。だってマネージャーはそれが仕事だし。いいプレーをすることだけに専念することがプレーヤーの役目だと思っています」

”甘い夢”の足下に、落とし穴があいてるワ!

「ふーん。ところで山ちゃんは事務所にどんなイメージを持ってるの?」

「そうですね…うまく言えませんが”プレーヤーと一緒に頑張ってくれるパートナー”だと思っています。難関の所属オーディションをくぐり抜けることが出来たってことは、実力や可能性を認めて所属させてくれた訳ですよね。水をやり肥料をやり…という風に経験豊かなプロフェッショナルなマネージャーさんが、自分を”育てるためのプロデュース”をしてくれるんじゃないかと。そんな期待もふくらみます。あはは」

「で、どんな風に育っていくわけ?」
「そうですね。ちょくちょくオーディションのお誘いをしてもらって、少しづつ経験を積ませてくれるんだと思います。もし落ちても、マネージャーがダメ出しをしてくれる。次に生かすかどうかはボク次第なんですけどね…あ!もちろんボクだって努力しなきゃダメなんですよ。でもそうだな、うーん、服装や髪型のことで”流行っぽくしろ”とか言われるのは…正直面倒に感じるかも。僕は僕らしくありたいナァ。なんてね。えへへへへ」

極細木はぺろりと杯をなめた。
しばしの沈黙が持っていたタバコの灰を落とす。

キラリ!と極細木の金縁眼鏡が提灯を模した照明を跳ね返した。
「山ちゃんの”甘い夢”の足下に、落とし穴があいてるワ!…それも深いやつ」
「???」

声業界の女帝の言葉に身動きもできず、ただ呆然と酔いが冷めていくのを頭の片隅に感じることで、はじめて酒に呑まれていた自分に気がついたのだった…

やがて女帝は、私の甘いほろ酔いの幻想を、明るみのもとへと引きずりだす!
聞け!慟哭にも似た女帝の叫びを!
次回極細木『「事務所の深い落とし穴編(其の弐)”プレーヤーの深き欲望”』

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