2006年9月21日 ナレーターメルマガ23号より転載

ナレーター
雨あがりの夜。東京、赤坂。伝説のマネージャー極細木スガ子(ごくぼそきすがこ)のインタビューは続く。私はこの女帝から業界における、求められる人材、問題点、実状のすべてをききだそうと腹をすえた。

3年後には明らかに差がついていたりするのヨ

「先生は最初におっしゃいました。新人がこえなければならない『3つの壁』があると。一つは、既成の養成所などでナレーション教育が確立されていないため、新人はきちんとした教育を受けていないということでしたが、二つ目の壁について教えていただけませんんか。」
「え~……だって山ちゃんまた泣くでしょ(笑)?なんかイジめてるみたいでヤだな~喋り過ぎて喉いたいし~」

私はすぐさま呼び鈴を鳴らし、出されたにごり酒を女帝の杯に注ぐ。この酒は、そのまろやかさに似合わず、髄(ずい)まで酔う。

「売れていく新人と、忘れられていく新人。ワタクシに言わせれば、ほとんどのコが最初の実力なんてどんぐりの背比べみたいなものヨ。でも3年後には明らかに差がついていたりするのヨね。それほどでもなかったはずの才能も、使えば使うほど切れ味が鋭くなっていくのヨ。」
「3年後・・・その差はどこでついて行くんですか!?」

「それはマネージャーとの出会いと言ってもいいけど、積極的には見抜けるかどうかなのヨ!」
「そ、そんな事できるんですか?」

わかってないマネージャーがプレイヤーを潰しちゃうって悲劇もよくあるコトなのヨ

「まずはちゃんと《自分のやりたい事》を担当をしてくれるマネージャーや事務所を探してそれからアタックすることが大事よネ。誰でも、なんでもできるって訳ではないから《どのマネージャーがどういうマネジメントをするのか》を、きちんと調べるのよ。新人はここで間違うことが多いワ。」
「誰でも、どこでもいい訳じゃない…?」

「そうね、小さい規模の事務所なんかでは、本当は専門外でわかってないマネージャーが適当にダメ出しをして、結局プレイヤーを潰しちゃうって悲劇もよくあるコトなのヨ。大手事務所のトップマネージャーだって得意とする分野もあれば苦手とする分野もある。プレイヤーとの相性すらあるワケね」
「そ、そんな事があるんですか・・・!?」
「このお酒、すいすい入るわ~もう一杯」

「どんなに変に思えることを言っていても、売り出す力のあるマネージャーは正しい。逆に、一見まともな事を言っているようで、じょじょにプレイヤーをつぶすに等しいマネージメントだってあるわ。恐いことだけどこれはけっこうあるのヨネ~。ナレーターでも実力の差は天と地の開きがあるでしょ。もちろんマネージャーにもピンキリがあるのヨ」
「私の頭の中では、マネージャーはまるで神のようなものだとさえ思ってました。どんなマネージャーでもプレイに詳しく、すべてに解決策を用意しており、いつでも才能を求め、仕事のパイプはなんでも持っている・・・従っていれば間違いはないのだと・・・」

「マネージャーや事務所を見抜くのに、手っとりばやくて確実な方法は〈実績を〉調べることよね。きちんと実績があるかどうかをリサーチすることは、プレイヤーの人生を左右すると言っていいわワね。ひっく。簡単でショ?」
「でもよく考えれば、医者や弁護士のような国家資格がある人でも上手い下手があるんですから・・・」

「マネージャーっていっても、最近は表現することやプレーヤーになんら関心が無い新人も、わんさか入ってきてるのよね~そういうマネージャーが何十倍もの競争率を超えて入ってきたナレーターを選ぶってのも、おかしなものよね」
「そんなマネージャーに当たってしまったら・・・いったいどうすれば」

「それはね~。 選ばれることだけ考えてるんじゃなくて、自分でも選ぶと言うことね。それは選べるだけの力を付けるってことかな。自分の足で立てるだけの力よ!難しいけど、ここを目指さないとネ」

彼らはその灯を目指してしまうのだろうか。

大げさに聞こえるかもしれないが、養成所を転々とし結局どこにも所属できなかった私にとって、マネージャーや事務所はまるで万能の神のようなものだとさえ思っていた。
…しかし私は根本的なところでつまづいていた。私は、マネージャー、事務所を神格化することで自分の甘さを隠したかったのではないのだろうか。

「このお酒、ホントにおいしー!ひっく!あー、今回は別件だけど、いいたいこと言っちゃおっかナ?」
極細木は珍しく頬を赤らめつつ、杯を突きだす。くっとひと息であおると、とろんとした目で私をみつめながら、続けた。

「最近は〈ナレーター〉という言葉が乱用されていることが問題よね。イベントのMC=ナレコンがナレーターと言い出して、こちらの現場が混乱しはじめてるのよね。他にもいくつかあるけど、本来は番組ナレーションをする人が〈ナレーター〉なのよ…ネ…ぐぅ~、くかー」
「極細木先生だいじょうぶですか?せ、先生?!ああ~!寝る前に三つめの壁を私におしえて下さい!!」
「すぴー」

ジジジ…と音をたてて、窓の外の街灯に虫が飛び交っている。
蛍光灯に集まる、夏の虫ー。
どこまで飛んでも闇の中から抜け出せない時、彼らはその灯を目指してしまうのだろうか。かつての私と同じようにー。

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